大学等で学ぶために貸与型の奨学金制度を利用したという方は、社会人になってから返済がスタートすることになります。
基本的には、無理のない返済額に設定されていることがほとんどですが、社会人になったばかりではそれほど収入もありませんよね。
もし、体調を崩して収入が減ってしまったり、医療費がかさんでしまったりといった、ちょっとしたトラブルがあれば、奨学金の返済が辛くなってしまうこともあります。
では、奨学金の返済が辛い場合、債務整理を利用することはできるのでしょうか?債務整理は借金問題を根本から解決できる手続きではありますが、奨学金の場合も同様なのでしょうか?
この記事では、奨学金の債務整理について詳しく解説していきます。
奨学金も債務整理できる!手続きの種類は3つ
結論からいえば、奨学金を債務整理することは可能です。
奨学金の場合も、通常の債務整理と同様に「任意整理」「個人再生」「自己破産」という3つの手続きがあります。それぞれの手続きで奨学金を対象とした場合、どのような取扱いになるのかをご説明します。
債権者と交渉し、奨学金の利息のカットなどをしてもらう「任意整理」
奨学金を任意整理した場合、利息の免除と月々の支払額を少なくすることなどを交渉します。
ただ、奨学金の債務を「任意整理」するのは、正直なところあまり恩恵がありません。というのも、奨学金というのは無利子ものも多く、有利子であったとしても利息そのものが低く設定されていることがほとんどです。
任意整理は、債権者と交渉して今の契約内容を見直してもらう手続きなのですが、奨学金の場合、利息がない(低い)など、はじめから借り手側が優遇された条件であることが多く、手続きを利用するメリットがほとんどないのです。
しかし、奨学金以外の債務がある場合は、そちらを手続きの対象とすることで、毎月の返済負担を軽減できます。奨学金のみを対象とするのではなく、その他の借入がある方は、任意整理を視野にいれる価値は十分にあるでしょう。
裁判所の認可を得て、奨学金を5分の1程度まで圧縮できる「個人再生」
個人再生は裁判所を利用して行う手続きで、借金のおよそ7~8割程度を減額し、減額された借金を3年(伸長が認められれば5年)で返済すれば、完済扱いにしてもらえるというものです。
ただし、個人再生の利用には、一定の収入があることが条件となります。
また、奨学金を含む住宅ローン以外の借金の総額が5,000万円以上になる場合、個人再生を利用することはできません。
個人再生は、債務整理の中でも条件が複雑で手続きが難しいので、検討する場合は専門家へ相談するようにしてください。
裁判所の許可を得て奨学金の返済を免除してもらう「自己破産」
自己破産は、個人再生同様、裁判所を利用して行う手続きです。
裁判所から支払い不能であることを認めてもらい、免責許可を得ることで、借金の返済義務がすべてなくなります。一方で、時価で20万円以上の財産は原則として処分されてしまうデメリットがあります。
自己破産を検討するのは、奨学金やその他の借金返済が苦しく、任意整理や個人再生ではとても返済を継続できない場合です。たとえば、まったくの無収入になってしまったり、生活保護を受けることになったりといった、支払い不能が認められる状態でなければ、自己破産をすることはできなくなっています。
すべての返済が免除されるのでお得な手続きに見えるかもしれませんが、デメリットも一番多い破産は、借金整理の最後の手段です。
奨学金を債務整理するリスク3つ
奨学金を債務整理する場合は、3つのリスクを抱えることになります。
②個人信用情報機関に事故情報が登録されてしまう
③官報に個人再生・自己破産をした事実が掲載されてしまう
保証人や連帯保証人に請求がいってしまう
奨学金には、ほぼ必ずといってよいほど保証人がついています。債務整理を利用する場合は、保証人が誰になっているかが非常に重要です。
奨学金の保証人は、主に「人的保証」と「機関保証」という2パターンがあります。人的保証とは、連帯保証人が親、保証人が親戚であるケースです。機関保証とは、保証料を支払うことで保証会社が保証人となっているケースです。
機関保証の場合、債務整理をしても請求がいくのは保証会社で、人的保証の場合は、連帯保証人や保証人に請求がいってしまいます。
親御さんが保証人となっている場合、あなたが債務整理をすると、あなたが払いきれない分の債務は、親御さんへ請求されます。一般的に、保証人へ請求される際は一括請求になりますので、もし、連帯保証人や保証人が一括で返済できない場合、一緒に債務整理を検討しなければいけなくなってしまいます。
個人信用情報機関に事故情報が登録されてしまう
債務整理をすると、個人信用情報機関に事故情報が登録されることになります。いわゆるブラックリストと言われる状態で、一定期間は新たな借り入れやクレジットカードの作成といった審査に通るのが難しくなります。
事故情報が登録されている期間は、利用する債務整理手続きによっても異なりますが、5~10年程度となっています。抹消されるまでの期間は、基本的には現金のみでの生活となってしまうため注意が必要です。
官報に個人再生・自己破産をした事実が掲載されてしまう
個人再生や自己破産をした場合、そのことが官報に氏名・住所と共に掲載されてしまいます。
官報というのは、日本の政府が発行する新聞のようなもので、一般の人も閲覧することができます。主な掲載内容は、法律、政令、省令、告示、通知など、政府の重要な法的文書等です。
基本的に官報を閲覧しているのは、金融機関など一部の限られた職種の人ですが、債務整理をした事実と氏名・住所が掲載されてしまう点はリスクの1つと言えるでしょう。
債務整理は最後の手段!奨学金の返済が厳しいときにまず検討すべき制度3つ
債務整理をする場合、相応のリスクが生じてしまうことから、まさに最後の手段と言えるでしょう。債務整理は、奨学金以外の借金にも悩まされているのであれば、リスクを受け入れてでも利用すべき手続きですが、奨学金のみが対象であれば、無理に利用する手続きではありません。奨学金の返済が厳しいときは、債務整理とは別の救済制度が設けられていますので、以下でご説明する3つの制度の利用を視野に入れてみましょう。
月々の返済額を減らす「減額返還制度」
通常どおりの支払いが困難な場合、月々の返済額を減らせるのが、日本学生支援機構が行っている「減額返還制度」です。
申請が受理されると、1回の支払額が3分の1、もしくは2分の1に減額され、それが12か月間適用されます。申請は最長で15年まで延長することができます。
利用するには、条件があり、災害、傷病、経済困難、失業などの事情が生じていなければなりません。
また、この制度は、返済予定額そのものが減額されるわけではありません。減額した分に応じて返還期間が延長されることになります。
返済期間を猶予してもらう「返還期限猶予制度」
「返還期限猶予制度」は、こちらも日本学生支援機構が行っている制度で、返済を一定期間猶予してもらうことができます。
利用するには、災害、傷病、経済困難、失業といった支払いが困難となる事情が生じた場合で、合計120か月を限度として支払いが猶予されます。こちらはあくまでも期限が猶予されるだけであって、元金や利息が免除されるわけではありません。
まとめ
奨学金の返済が厳しいのであれば、債務整理を利用することは可能です。
しかし、債務整理の対象が奨学金のみである場合、あまり恩恵を受けられない可能性が高いでしょう。そのうえ、保証人がついている場合は、連帯保証人・保証人に請求がいってしまうため注意が必要です。その他にも、債務整理はリスクを伴うため、利用するのであれば奨学金以外の借金返済も苦しい状況にある方が適していると言えるでしょう。
奨学金の返済にのみ困っているという方は、奨学金の返済が厳しい場合に利用できる救済制度の利用を検討するのが良いでしょう。もし、利用が難しい、利用しても解決が難しいといった場合は、借金問題のプロである司法書士・弁護士に相談をしてください。
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司法書士試験合格後、平成16年に簡裁代理権を取得し、不動産や会社の登記業務を数多く手がけてきた。また年間1000人以上の過払い金や借金問題に対峙してきた。「法律用語はなるべく使わず、詳しく、わかりやすく、ゆっくりと、ご説明する」をモットーにじっくりを耳を傾け、ご相談にいらした方々が笑顔でお帰りになる事が私たちの仕事だと考えています。