自己破産の具体的な流れを知りたいという方は多いのではないでしょうか?
手続きの流れを事前に把握しておくことで、自身が今どの段階まで進んでいるのかを知ることができます。また、すでに自己破産を専門家に依頼中の方も、この記事を参考にすることで、あとどの程度で手続きが終了するかの指標とすることもできますね。
というわけで今回は、自己破産の流れについて詳しく解説していこうと思います。
自己破産の手続きは専門家への依頼から始まる
自己破産の手続きは、基本的には専門家への依頼から始まります。
実をいうと、自己破産は個人で申し立てることも可能な手続きです。しかし、専門家を挟む場合とそうでない場合とで、裁判所からの信頼が大きく異なり、個人で申し立てたというだけで財産がないにも関わらず管財事件(以下で詳しくご説明します)とされてしまうこともあるのです。管財事件になってしまうと、かかる時間や手間だけでなく、管財費用という金銭的負担も増えてしまうことから、自己破産は個人で申し立てるのではなく専門家に依頼するようにしてください。
専門家へ自己破産を依頼する
まずは専門家へ自己破産の相談をしましょう。
相談予約を取るために、専門家とコンタクトを取る必要があります。方法としては、電話やメール等、依頼をしたい専門家のホームページを参考にしてみるのが良いでしょう。
それ以外にも、自治体の実施している債務相談や、弁護士会・司法書士会が実施している法律相談を利用し、依頼したい専門家を探してみるのも良い方法です。
専門家というのは、相談したからといってその場で依頼しなければならないわけではありません。何度か無料相談などを利用し、自分が信頼できる専門家を探すのも大切です。
受任通知により返済や取り立てが止まる
専門家に自己破産を依頼すると、債権者(貸金業者などの借入先)に対して、「受任通知」が発送されます。受任通知を受けた貸金業者は、貸金業法の規定により本人に対して直接の返済や取り立てといった督促行為ができなくなります。その後、すべての窓口が専門家となるため、貸金業者からの催促によるストレスが軽減されます。また、返済そのものもストップするため、実際にはこのタイミングで借金に悩まされない毎日を手に入れられます。
相談から受任通知発送までの期間はおおよそ2~3日となっています。もし、緊急で貸金業者からの督促を止めたい等の理由がある場合は、専門家に事前に伝え、即日発送してもらえないか相談してみるのも良いでしょう。
必要書類の準備
受任通知が発送されると、債権者は現在残高や取引履歴を専門家に対して返送します。
一般的には、すべての債権者から書類が届いた後、債務整理方針を確定することになります。ここで専門家が借金問題解決のためには自己破産が必要と判断した場合、必要書類を準備していくことになります。自己破産の必要書類は多岐に及ぶため、すべてを準備するのはかなりの手間ですが、基本的には弁護士や司法書士の指示通りにそろえるだけです。
取得等にどうしても時間は割かれてしまいますが、専門家の指示通り、正確にそろえていきましょう。書類が足りなければ自己破産の申し立てはできませんし、仮に申し立てたとしても裁判所から追完するよう指示されてしまう上、心証も悪くなってしまうので注意です。
必要書類にかかる準備期間については、最低でも2か月程度となっています。これは直近2か月分の家計の収支状況を作成しなければならないためです。自己破産は申し立てをする裁判所によって若干運用が異なるのですが、基本的には2か月分となっています。
自己破産申立て
必要書類がすべてそろったら、次は裁判所へ自己破産の申し立てをします。
申立てには、手数料として収入印紙が1,000円か1,500円(財産状況によって異なる)、連絡用の郵便切手が2,000~5,000円程度(裁判所ごとに異なる)となっています。
その他、官報掲載費用が10,584円、後述する管財事件になる場合は、裁判所から指示された管財費用を納めなければなりません。
こうした申立て費用は、事前にしっかり準備しておくようにしましょう。
裁判所で面接・破産手続き開始決定が下される
自己破産の申し立て後、裁判所書記官による申立て書類のチェックが行われます。書記官からの不足書類や追加書類の指示に従って、手続きを進めていきましょう。
提出した書類に不備が見つからなければ、次は審尋(しんじん)といって、裁判官と申立人との面接が実施されることがあります。こちらも裁判所によって若干運用が異なるため、必ず行われるわけではありませんが、破産手続き開始を判断する審尋であることから、「破産審尋」と呼ばれています。この破産審尋は、申立てから1か月程度で開かれることが一般的となっています。
「財産がない場合」同時廃止決定・免責手続きがはじまる
破産手続きの中で換価しなければならないような、めぼしい財産がない場合、「同時廃止事件」として処理されます。同時廃止とは、破産手続きの開始と同時に手続きを終了する(廃止する)というものです。
実は、自己破産という手続きは、「破産手続き」と「免責手続き」の2つで1つの手続きとなっています。手続き上、この2つの手続きは同時進行していると考えられていますが、同時廃止として処理された場合、次は免責手続きが始まることになり、裁判官が必要と判断した場合は、破産手続きと同様、「免責審尋」が開かれることになります。免責審尋後は、「意見申述期間」といって、債権者から免責についての意見をもらう期間が設けられます。意見申述期間は1か月と破産法にて規定されているため、同時廃止決定から免責手続き終了までは2か月程度です。意見申述については、一般的な貸金業者は特になにもしてきません。個人的な貸し付けがある場合に限り、免責不許可事由に該当している等の意見を出されることもありますが、ほぼ採用されることもなく、最終的には裁判官の裁量にて免責決定が出されることがほとんどです。
「財産がある場合のみ」破産管財人が選任され、財産処分が行われる
33万円以上の現金や、時価で20万円以上の財産がある場合、破産管財人が選任され、破産手続きが行われることになります。破産管財人は、裁判所管轄内の弁護士が選任されることになっていて、一度、その弁護士の事務所等で打ち合わせをするのが一般的な流れです。
破産手続きの中で破産管財人は、財産調査として郵便物をチェックしたり、財産を処分して債権者に配当したりといった手続きを行います。そして、破産管財人の業務の進捗状況は、「債権者集会」として裁判所で開かれ、債権者たちに報告されることになっています。
この債権者集会には、破産者も同席しなければなりません。また、債権者集会に回数は決まっていませんので、裁判所と破産管財人が必要に応じて判断することになっています。
なお、管財事件については、比較的財産が少ない場合の「少額管財事件」と、それ以上の財産を持っている場合は、「通常管財事件」として処理されることになっています。通常管財よりも少額管財のほうが、裁判所に納めなければならない金額が少なくなります。
「財産がある場合のみ」免責審尋・免責手続き
破産管財人の業務が終了すると、同時廃止事件の場合と同様に免責審尋が行われます。免責審尋については、すでに破産審尋が行われていた場合、裁判官の判断でカットすることもあります。免責審尋終了後は、同時廃止事件と同様に意見申述期間が設けられます。期間についても同時廃止事件と同様で、免責手続き終了までは2か月程度となっています。
裁判所から免責許可決定(確定)が下りると返済義務がなくなる
免責手続き終了後、裁判所から免責許可決定、もしくは不許可の判断が下されます。免責許可となった場合は、その2週間後に効力が確定することになり、借金の返済義務がなくなります。免責許可から2週間の期間は、債権者の不服申し立て(即時抗告)期間となっていますが、一般の貸金業者が不服申し立てをすることはまずありませんので、それほど心配する必要はありません。免責許可決定の効力が確定した時点で、すべての手続きは終了です。
自己破産の手続きには大体3~6か月(長くて1年)かかる
自己破産の手続きは、専門家への依頼から手続き終了まで、大体3~6か月程度、長いと1年程度かかることになります。とはいえ、毎月裁判所にいかなければならないわけでもありませんので、日常生活に影響を及ぼす心配はほとんどないと言えるでしょう。
自己破産の手続きであなたがやることはたった3つ!
自己破産は裁判所で行われる手続きであるため、専門用語や決まり事なども多く、難しいと感じてしまった方も多いのではないでしょうか?しかし、専門家に依頼さえしてしまえば、手続きの中であなたがやらなければならないことは以下の3つしかありません。
(1)専門家に依頼する
(2)書類を準備する
(3)裁判所に1~2回程度行く
(1)専門家に依頼する
自己破産は必ず専門家に依頼するようにしてください。
個人で自己破産を行うのは裁判所に納める費用の増加や、書類作成・裁判所とのやり取りといった負担面が多大なものとなりますので、必ず専門家に依頼しましょう。
自己破産に対応できる専門家は、司法書士と弁護士になっています。
(2)書類を準備する
自己破産において裁判所に提出する必要書類は非常に多く、集めるのが大変です。しかし、専門家に依頼さえしていれば、書類作成までする必要はありません。裁判所に提出する上で作成が必要になる書類は、基本的には専門家のほうで準備してもらえるため、あなたは専門家に指示された書類だけを準備するだけで大丈夫です。
なお、申立人側で取得すべき主な必要書類は以下のとおりです。
・住民票(必要に応じて戸籍謄本)
・給与明細書など収入がわかるもの
・1~2年分の預金通帳のコピー
・源泉徴収票(課税証明書)
・その他、資産関係がわかる疎明資料など
上記の他、どうしても申立人側で作成しなければならないのが家計表です。自己破産では、2か月分の家計表の提出を求められることがほとんどなので、自己破産の方針確定から2か月間は、家計表を付けるだけでなく、給与明細書はもちろん、公共料金の支払い明細など、支払いを裏付ける書類をしっかりと取っておくようにしてください。
(3)裁判所に1~2回程度行く
自己破産の申し立て後は、裁判官の判断で1~2回程度は裁判所に行くことになります。
この回数に関しては、裁判所そのものの運用方針、担当裁判官の判断によって大きく異なりますので、明確な回数を断言することはできません。ただ、同時廃止事件の場合で、生活保護を受けているなど、支払い不能であることが調査などせずとも明確な場合は、1度も裁判所に呼ばれることなく手続きが終了することもあります。また、裁判所へ足を運ぶのが困難な場合など、特段の事情があるのであれば事前に裁判所に告げておきましょう。
自己破産手続きは裁判所の運用方針や裁判官の判断によるところが大きく、明確な取り決めといったものはありませんので、申立人側の意見が採用されることも多いです。
まとめ
自己破産の流れは、財産の保有状況によっても大きく異なってくるため、理解するのが難しいと感じてしまった方も多いのではないでしょうか?しかし、専門家に依頼さえしていれば、やらなければならないことはたったの3つですし、現在の進捗状況については専門家に確認をすれば問題なく理解できるはずです。また、申立てさえしてしまえば、後は裁判所が先導して進めていくため、進捗状況をそれほど心配する必要はありません。
自己破産は、個々の状況や保有資産によってどうしても個人差が生じてしまうため、ケースバイケースな側面が強い手続きです。そのため、個人で行うのは非常に難しい手続きであることと、現在の状況を解決させる方法が、そもそも自己破産であるのか、その他の債務整理手続きが適正なのか等々、まずは専門家に相談してみることからはじめてみましょう。
司法書士試験合格後、平成16年に簡裁代理権を取得し、不動産や会社の登記業務を数多く手がけてきた。また年間1000人以上の過払い金や借金問題に対峙してきた。「法律用語はなるべく使わず、詳しく、わかりやすく、ゆっくりと、ご説明する」をモットーにじっくりを耳を傾け、ご相談にいらした方々が笑顔でお帰りになる事が私たちの仕事だと考えています。