自己破産が認められなかったらどうすればいい?不許可の理由と対処方法を解説

自己破産は裁判所に借金の支払い義務の免除を求める手続きです。

借金の支払い義務がなくなるということは、貸していた側は不利益を被ることになります。よって、裁判所はあくまでも公正な立場から、借金の支払い義務を免除する「免責決定」について判断します。事情次第では、免責決定が認められないことがあってもおかしくはないということです。
確かに、自己破産は多重債務者を救済する目的で設けられた制度ではありますが、すべてが債務者側にとって都合の良い手続きではないという点を理解しなければなりません。

というわけで今回は、自己破産が認められない場合と、その際の対処法について詳しくご説明していきます。

自己破産は認められないこともある

自己破産は誰にでも申立てできる手続きではありますが、誰もが裁判所から免責決定を得られるわけではありません。裁判所は、申立人の収支状況や財産状況、多重債務に至った経緯などといった様々な事情を鑑み、免責決定を出すかどうかを判断しています。誰でも免責決定を得られてしまえば、「借金をするだけして自己破産すればいい」といった考えが蔓延してしまいます。となれば、お金を貸した側はひたすら不利益を被り続けることとなりますし、すべての貸金業者が廃業へと追い込まれることになってしまいます。

こうした理由から、自己破産は必ず認められる手続きではありません。裁判所が免責決定を出す上で重要視しているのは、「支払い不能状態であるか」、「免責不許可事由に該当してないか」の2点です。では、以下の章にてそれぞれ詳しく見ていきましょう。

「支払い不能状態」でないと自己破産は認められない

免責決定を得る上で1つの指標となるのが、「支払い不能状態」であるかどうかです。

支払い不能状態とは、個人の感覚で支払いができないといった状態ではなく、第三者が客観的に見ても支払い不能である状態を指します。よって、申立人がどれだけ借金の返済ができないと訴えても、裁判所から見てそうでなければ免責決定が出ることはありません。

では、どういった場合は支払い不能状態とは言えないのでしょう?いくつか具体的なケースを挙げてご説明していきます。

ケース①…借金金額が少ない

借金している金額自体が少ない場合は、免責決定は認められない可能性が高いです。
といっても、個々の収支状況によって具体的な金額は異なってきます。たとえば、毎月の収入が10万円程度しかない方が、300万円を超える借金を抱えているのであれば、支払い不能状態といっても過言ではありません。一方で、毎月50万円の収入のある方が、300万円の借金を抱えていたとしても、支払い不能状態とは言えないのは目に見えてわかります。
このように、単に借金の総額だけで判断されることではなく、申立てをする方の収入に対して、どれだけ借金があるかで判断されることになっています。よって、一概にいくら程度であれば、借金が少ないと明言することはできなくなっています。

ケース②…預貯金などの財産がある

では、収入がなければ自己破産は認められるのか?といえばそういうことではありません。
預貯金や不動産など高額な財産を保有していて、それらを売却することで借金の返済が十分に可能であれば、当然ながら免責決定が認められることはありません。
保有財産をすべて清算したとしても、返済できないほどの借金があってはじめて、支払い不能状態であると言えます。こうした理由からも、自己破産は数ある債務整理手続きの中でも最後に検討すべき手続きとなっています。

ケース③…一時的に収入が落ち込んでいる状態

一時的に収入が落ち込んでいる状態は、支払い不能状態とは言えません。将来的に十分に返済を継続できる見込みがあるのであれば、免責決定は認められない可能性が高いです。
とはいえ、収入が落ち込んでいる期間が半年~1年以上あるとなれば、その間の支払いができないのも無理はありませんので、預貯金などの財産がまったくない状況であれば、支払い不能状態と判断されることもあります。こうした判断というのは、個人が簡単に行えることではないため、専門家に判断してもらうことを強くおすすめします。

「免責不許可事由」に該当していると自己破産は認められない

免責決定を得る上でもう1つの指標であるのが、「免責不許可事由の有無」です。
免責不許可事由とは、自己破産の根拠となっている破産法に明記されている事由がある場合、免責が認められることは原則としてはありません。

では、どういったケースが免責不許可事由に該当することになるのでしょうか?いくつか具体的なケースを挙げてご説明していきます。

ケース①…財産を隠したり処分していた

財産を意図的に隠したり、不当な金額で処分したりする行為は免責不許可事由に該当します。たとえば、自宅を守るため直前で配偶者名義に変更していたり、不当に安い金額で家族や親族に売却していたりといった場合です。

ケース②…クレジットカードを現金化していた

クレジットカードなどで購入した商品を、著しく低額な金額で売却する行為は免責不許可事由に該当します。たとえば、クレジットカードのショッピング枠の現金化などが、こちらの行為に該当することになります。借金の返済にどうしても現金が必要で、ショッピング枠の現金化に手を出してしまうことがないよう注意してください。

ケース③…過去に自己破産してから7年経過していない

自己破産には回数制限や年齢制限といったものはありませんが、過去7年以内に免責決定を得ている方は、原則として再度の自己破産申し立てはできないことになっています。
もし、7年以内に免責決定を得ている過去がある方は、7年経過するまで他の債務整理手続きにて返済を継続させるといった対策が必要となります。まずは専門家に相談し、どういった対策を取るべきかの判断を扇ぐことを強くおすすめします。

ケース④…借金の理由が賭博や浪費である

借金の理由が賭博や浪費である場合は、免責不許可事由に該当することになります。
たとえば、パチスロ・パチンコ・競馬・競艇・競輪などは、賭博に該当しますし、ブランド品や嗜好品などの過剰なショッピングは浪費に該当し、いずれも免責不許可事由です。

ケース⑤…借金の理由が射幸行為である

借金の理由が射幸行為であり場合は、免責不許可事由に該当することになります。
上記で賭博や浪費について触れましたが、射幸行為の具体例は、株取引やFX、先物取引、近年話題に上がったものだと仮想通貨といった暗号資産取引が該当します。

ケース⑥…偏波弁済をしていた

偏波弁済は免責不許可事由に該当することになります。偏波弁済とは、特定の債権者にだけ返済することを指します。民法には「債権者平等の原則」といって、すべての債権者を同様に扱わなければならない決まりがあり、自己破産もこちらを準用しています。たとえば、家族や知人にだけ優先して返済することは、偏波弁済に該当するため注意が必要です。

ケース⑦…返済できないのをわかっていて借金した

自身がすでに自己破産することを視野に入れており、すでに返済できないことをわかって借金をする行為は、免責不許可事由に該当することになります。たとえば、すでに借金の返済ができていないのも関わらず、あたかも返済できるかのように嘘をついてお金を借りる行為は免責不許可事由となります。

ケース⑧…財産状況に関する資料を偽造・変造などした

財産状況に関する資料を偽造・変造などする行為は、免責不許可事由となります。たとえば、決算書や確定申告書などを、自己破産のために書き換えたりなどしてはなりません。

ケース⑨…裁判所・破産管財人の調査に協力しなかった

自己破産では、裁判所や破産管財人から調査の協力を求められることがあります。この調査協力に応じない場合も、免責不許可事由に該当することになっています。裁判所や破産管財人からの協力要請には、誠実に応えるようにしてください。

免責不許可事由に該当している場合の対処法

では、免責不許可事由に該当している場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?
一見すると、賭博や浪費、射幸行為というのは借金を重ねる理由としては決してめずらしいことではありませんし、偏波弁済についても不注意で行ってしまう方がいてもおかしくはありません。こうした方の自己破産申し立てをすべて却下にしてしまっていては、多重債務者の救済という自己破産本来の目的を果たせることになりませんよね。
そこで、たとえ免責不許可事由に該当していたとしても、免責を得ることができる方法について、以下にて詳しくご説明していきます。

裁量免責を求める

自己破産には免責不許可事由に該当する場合でも、「裁量免責」を求めることで免責決定を得られる場合があります。裁量免責とは、裁判官の判断で免責決定を出すことです。
免責不許可事由の中でも該当している方が多そうな、賭博や浪費を行った方でも免責決定を得られているのは、裁判官の独自の判断による裁量免責の存在があるためです。

反省文を書いて提出する

免責不許可事由に該当している場合は、「反省文」の提出が非常に有効です。手続きに臨む誠実な態度が裁判官に評価され、裁量免責へと繋がる可能性がぐっと高くなります。
専門家に自己破産を依頼している場合、まず間違いなく反省文の作成を提案されますので、免責不許可事由に該当しているという方は、必ず書くようにしてください。

他の債務整理の方法を検討する

免責不許可事由に該当している上に裁量免責も見込めない場合は、他の債務整理の方法を検討するしかありません。借金問題を解決させる方法は、なにも自己破産だけではないのです。債務整理には他にも任意整理や個人再生といった手続きがあります。

任意整理とは
任意整理とは、債権者と裁判外の交渉で返済負担を軽減させる手続きです。一般的には、将来利息がすべてカットされるため、借入元金のみを返済していくだけで完済扱いにしてもらえます。任意整理をする場合、借入元金を3~5年以内に完済できるだけの資力必要となってくるため、こちらの条件を満たしていないか検討してみてください。

個人再生とは
個人再生とは、裁判所に申し立てることで借金の7~8割程度を減額してもらう手続きです。減額された借金を3年(事情次第で5年)以内に完済を目指します。個人再生を利用する場合、一定の収入が必要となりますが、自己破産と違って免責不許可事由がありません。免責不許可事由が理由で自己破産できない場合の最有力候補が個人再生です。

まとめ

自己破産というのは、申し立てたからといって必ず借金が免除になる手続きではありません。現在の収支状況だけでなく、預貯金といった保有財産や多重債務に至った経緯など、様々な観点から判断される手続きです。そして、免責不許可事由に該当していた場合は、原則として免責決定は出ないことになっています。しかし、救済措置として裁判官独自の判断による「裁量免責」があるため、ほとんどの方は免責決定を得ることが可能です。そのためにも、裁判官に誠実さを評価してもらえるように、調査要請には積極的に応じるだけでなく、反省文の提出など可能な限り真摯な態度で臨みましょう。
どうしても不安な方は、一度専門家に相談してみるのが良いでしょう。専門家であれば、自己破産が認められるか否かはもちろん、他の債務整理で解決できないか等、的確なアドバイスをしてもらうことができます。

過払い金債務整理のご相談

問い合わせフォーム >
相談無料 通話料無料
借金のご相談、まずはお電話ください!
フリーダイヤル 0120-77-9674
借金減額のご相談は 0120-77-9674