債務整理をすることで、今抱えている借金が減額され、間違いなく返済負担を大幅に軽減させることができます。しかし、減額された借金を完済したことによって、何かしら不都合が生じるのではないか?といった心配をされている方は多いのではないでしょうか。他の人は債務整理などせずに完済しているのに、自分は減額された借金を支払って完済したことにしてもらっている…そんな風にも感じてしまいますよね。
そこで今回は、債務整理で減額した借金を完済した場合、その後なにかしら生活に変化があるのか、について詳しく解説していきます。
債務整理で減額した借金を完済したら変わること・変わらないこと
債務整理で減額した借金を完済したら、主に以下のような2つの変化があります。
①借金の返済から解放される
②「完済証明書」が発行される
一方で、以下の2つについては、完済後も変わらないことです。
①信用情報はまだ回復しない!
②債務整理をした事実が将来に悪影響を与えることはない
借金の返済から解放される
債務整理で減額した借金を完済すれば、もう毎月の返済に悩まされる必要はありません。それどころか、毎月の返済がなくなる分、家計に余裕を持つことができます。今まではなかなか難しかった貯金をするのも良いですし、切り詰めていた生活費を少し増やしてゆとりのある生活を送ることだって可能です。
債務整理によって借金が減額されていたとしても、完済である事実に変わりはないため、債務整理せずに完済した方と比較して、何も引け目を感じることなどありません。もちろん、債権者も後になって増額してきたり、不足分を請求してきたりといったことはしませんので、堂々と胸を張って完済した自分を誇ってくださいね。債務整理は完済までのきっかけに過ぎません。完済はご自身の努力の賜物です。
「完済証明書」がもらえる
債務整理による完済後は、債権者から契約書の返還と、「完済証明書」が送られてくることがあります。完済証明書とは言葉の通り、借金を完済した事実を証明するものです。
完済証明書の発行については、自発的に債権者から送られてくることもあれば、別途依頼しないと発行してもらえない場合もあります。また、完済証明書ではなく借り入れ当初の契約書等が送付されてくる場合もあります。
自分以外に対して借金の完済を証明する機会というのはほとんどないと言えますが、念のために完済証明が必要という方は、事前に債権者に確認しておくのが良いでしょう。
なお、債務整理による返済中も代理人(弁護士や司法書士)が介入している状態の場合、完済証明書は代理人宛に送付されます。債権者側から連絡が入ることはないため、依頼している事務所に確認するようにしてください。
信用情報はまだ回復しない!
債務整理で減額した借金を完済したとしても、即座に個人信用情報が回復することはありません。債務整理をすると、個人信用情報機関に事故情報が登録されてしまい、これが弊害となって新たな借り入れをしたり、クレジットカードを作ったり、ローン組んだりといったことが困難になります。この事故情報は、債務整理による完済後、抹消までは5~10年程度かかってしまいます。
完済した時点では事故情報は消えておらず、引き続き制限がかかった状態が続いてしまうため注意が必要です。
自身の事故情報が消えているか確認したい場合は、後述する信用情報の確認方法をご覧ください。
債務整理をした事実が将来に悪影響を与えることはない
債務整理をした事実が将来に悪影響を与えることはありません。
たとえば、債務整理をした事実を履歴書に記載しなければならなかったり、戸籍に記録されてしまったりといったことは一切ありません。債務整理した事実を他者に告げなければならない場面など、将来的に訪れることはありませんのでご安心ください。
意外と簡単!信用情報は自分で確認できる
債務整理による完済後、個人信用情報を確認したいと感じた方は、日本の主な個人信用情報機関である以下の3か所に照会手続きをすることで、自分でも確認ができます。
①日本信用情報機関(JICC)
②シー・アイ・シー(CIC)
③全国銀行個人信用情報センター(KSC)
日本信用情報機構(JICC)
日本信用情報機構(JICC)は、日本で最も加盟数が多い指定信用情報機関です。主に消費者金融が多く加盟していて、全体の半数を占めています。
日本信用情報機構で本人開示を行う場合、「スマホ申込」、「郵送申込」、「窓口申込」の3つの申込方法があります。いずれの場合も、免許証やマイナンバーカードといった本人確認書類、手数料として1,000円がかかります。手数料はクレジットカード払いの他、定額小為替証書にて支払うことができます。定額小為替証書は郵便局で購入できます。
シー・アイ・シー(CIC)
シー・アイ・シー(CIC)は、主に割賦販売法と貸金業法に基づいた指定信用情報機関です。
スマホの分割購入の際などに、携帯電話会社やカード会社が照会をかけています。
シー・アイ・シーで本人開示を行う場合、「インターネット開示」と「郵送開示」の2つの開示方法があります。インターネット開示の場合は、発信番号を通知できる電話と手数料として500円がかかります。支払いはクレジットカード払いか、キャリア決済が使えます。郵送開示の場合は、本人確認書類などの必要書類に加え手数料として1,500円がかかります。支払いは郵便局で購入できる定額小為替証書のみ使用可能です。
全国銀行個人信用情報センター(KSC)
全国銀行個人信用情報センター(KSC)は、主に地方銀行やネット銀行、信用金庫や信用組合などが加盟している指定信用情報機関です。
全国銀行個人信用情報センターで本人開示を行う場合、「インターネット開示」と「郵送開示」の2つの申込方法があります。インターネット開示の場合は、写真付き本人確認資料と手数料として1,000円がかかります。支払いはクレジットカード、PayPay・キャリア決済の利用が可能です。郵送開示の場合は、本人確認資料など必要書類の他、本人開示利用券をコンビニで購入する必要があります。金額はコンビニによって若干異なりますが、1,200円程度となっています。
完済しても借り入れできない?!「社内ブラック」に注意
上記のとおり、完済し事故情報が消えれば、新たに借り入れをすることも可能となります。しかし、たとえ完済後であっても借り入れができない、「社内ブラック」に注意する必要があります。
社内ブラックとは、貸金業者や金融機関等が自社で独自に保管しているリストのことで、過去に問題のあった顧客の情報が登録されています。つまり、債務整理の対象となった貸金業者などに、再度の借入申込をしたとしても、社内ブラックを理由に断られてしまう場合があります。
完済後の生活で心がけたいこと3つ
それでは次に、完済後の生活で心がけたいことを3つほどご紹介します。
①返済がなくなって余裕ができても散財しない
②クレジットカードは作りすぎない
③不測の事態に備えて貯金をする
返済がなくなって余裕ができても散財しない
返済がなくなって余裕ができても散財しないように注意しましょう。毎月の固定費の中から返済分がなくなるため、生活に大きな余裕が出てきます。しかし、余裕が出たからといってお金を使いすぎてしまい、再度散財してしまっては、これまで債務整理による返済を続けてきた意味がなくなってしまいます。
もう二度と借金問題に悩まされない生活を続けるためにも、日頃からお金の使い方については慎重に判断するようにしてください。
クレジットカードは作りすぎない
債務整理による完済後、事故情報が抹消されれば再度クレジットカードを作ることができるようになります。クレジットカードはとても便利ですし、ポイントもつくことからついついたくさん作りすぎてしまうことがあります。しかし、クレジットカードというのはお金を払っている感覚がない分、使いすぎてしまう傾向にあります。どうしてもカードが必要な場合は、銀行口座から即時引き落としがされるデビットカードの利用などを検討してみると良いでしょう。
不測の事態に備えて貯蓄する
債務整理によって無事に完済できたとしても、今後急に支出が増えたり、収入が減ったりする可能性は十分にあります。2020年に世界的流行となった新型肺炎は記憶に新しいところです。急な失業や減給というのは、生活している以上、必ず起こり得ることです。こうした不測の事態が起きた際に、借金に頼らずに乗り切るためにも、できるだけ生活防衛資金は確保しておきたいところですよね。そのためにも、不測の事態に備えて貯蓄しておく癖をつけましょう。
まとめ
債務整理で減額した借金であっても、完済することができれば、その後は借金の支払いから解放されます。しかし、完済直後から信用情報が回復するわけではない点に注意です。信用情報が回復するには、債務整理の手続き終了から5~10年ほどかかります。ご自身の信用情報がどうなっているのか気になる方は、各信用情報機関に本人開示請求をしてみるのが良いでしょう。事故情報が抹消されていれば、また新たに借り入れをしたり、クレジットカードを作成したりできるようになっています。
とはいえ、また借金に依存する生活をしてしまっては意味がないので、日頃から現金の管理には気を配るようにしてください。もし、債務整理後の生活に不安があるという方は、一度専門家に相談してみるのがおすすめです。
司法書士試験合格後、平成16年に簡裁代理権を取得し、不動産や会社の登記業務を数多く手がけてきた。また年間1000人以上の過払い金や借金問題に対峙してきた。「法律用語はなるべく使わず、詳しく、わかりやすく、ゆっくりと、ご説明する」をモットーにじっくりを耳を傾け、ご相談にいらした方々が笑顔でお帰りになる事が私たちの仕事だと考えています。