ブラックリストに載るのが心配で債務整理ができない…
こういった方、多いのではないでしょうか?しかし、ブラックリストといってもその実態を正確に把握されている方はあまりいないのが現実です。そもそも、「ブラックリスト」と呼ばれるリストがこの世の中に存在しているわけではありません。
では、なぜブラックリストと呼ばれているのでしょうか?
この記事では、ブラックリストとはどのようなものなのか、債務整理をすると具体的にどうなってしまうのか、等について詳しく解説していきます。
“ブラックリスト”とは信用情報に事故情報が載ることの俗称
債務整理をするとブラックリストに載ると言われています。しかし、冒頭でも触れたようにそのようなリストは存在しません。
ブラックリストではなく、個人信用情報という個人の過去の借入の記録等が登録されているデータベースがあり、貸金業者や金融機関は、この個人信用情報のデータベースを照会し、対象者が信用に値するかどうかを判断しています。債務整理をすると、この個人信用情報機関に事故情報が登録されることになるため、この状態を「ブラックリストに載っている」と言われているのです。
信用情報を管理している「個人信用情報機関」は3つ
信用情報を管理している「個人信用情報機関」は、以下の3つとなります。
個人信用情報機関にはそれぞれ特徴がありますので、詳しく解説していきます。
※いずれも本記事公開時点の情報となります。
①日本信用情報機構(JICC)
日本信用情報機構(JICC)は、消費者金融が加盟している信用情報機関です。債務整理をなどの情報の保有期間は、契約日によってことなり、2019年9月30日以前の契約については「当該事実の発生日から5年を超えない期間(ただし、債権譲渡の事実に係る情報については当該事実の発生日から1年を超えない期間)」とあり、2019年10月1日以降は「契約継続中及び契約終了後5年以内(ただし、債権譲渡の事実に係る情報については当該事実の発生日から1年以内)」となっています。
いずれにしても5年は保有されるということになります。
(信用情報の内容と登録期間:https://www.jicc.co.jp/aboutus/credit-info/registration)
②シー・アイ・シー(CIC)
シー・アイ・シー(CIC)は、携帯電話会社・クレジットカード会社が加盟している信用情報機関です。債務整理などの情報の保有期間は「契約期間中および契約終了後5年以内」とされています。
(CICが保有する信用情報:https://www.cic.co.jp/confidence/posession.html#anchor02)
③全国銀行個人信用情報センター(KSC)
全国銀行個人信用情報センターは、銀行や信用金庫等が加盟している信用情報機関です。債務整理などの情報の保有期間は「契約期間中および契約終了日(完済していない場合は完済日)から5年を超えない期間」となっています。なお、自己破産をした場合については、「破産手続開始決定等を受けた日から7年を超えない期間」とされています。
(個人情報の取り扱い:https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/privacy/)
債務整理してブラックリストに載ることのリスク6つ
債務整理してブラックリストに載ってしまうと、主に以下の6つのリスクがあります。
①新たな借入ができなくなる
②クレジットカードが使えなくなる
③ローンが組めなくなる
④携帯やスマホの機種代金を分割にできなくなる
⑤保証人になれなくなる
⑥賃貸を契約できない場合がある
新たな借り入れができなくなる
債務整理をすることで、新たな借入が数年間できなくなります。新たな借入が制限される期間は、事故情報が登録されてから抹消されるまでの期間です。ただし、事故情報が掲載されている状態であっても、借入申込時の年収や、勤務先情報等、その他に良い属性を持っていれば審査に通る可能性はあります。
事故情報が抹消されるまでの期間、絶対に新たな借入ができない、というわけではありません。債務整理後のあなたの経済状況次第では、事故情報抹消前に新たな借入をすることは十分可能です。
クレジットカードが使えなくなる
債務整理をすることで、クレジットカードが使えなくなります。新たな借入ができないのと同様、クレジットカードの作成も事故情報が抹消されるまでの期間は制限を受けます。それに加え、現在使用できているクレジットカードも使えなくなってしまう点に注意です。
例外的に、債務整理の中で任意整理の場合に限り、クレジットカード会社を手続きの対象から外すことで、継続利用できる場合があります。しかし、それもカードの更新時などのタイミングで利用停止されてしまう可能性があります。
ローンが組めなくなる
債務整理をすることで、ローンを組むのが難しくなります。こちらも新たな借入ができないのと同様、ローンを組みたかったとしても事故情報が抹消されるまでの期間は制限を受けます。
携帯やスマホの機種代金を分割にできなくなる
債務整理をすることで、携帯やスマホの機種代金を分割にするのが難しくなります。こちらも新たな借入ができないのと同様で事故情報が抹消されるまでの期間制限を受けます。この間に購入する際は、機種代を一括で支払う必要があることを覚えておきましょう。
保証人になれなくなる
債務整理をすることで、住宅ローンや自動車ローン、奨学金などの保証人になるのが難しくなります。事故情報が登録されているということは、個人の信用が失われていることと同義です。信用がない場合は、保証人になるのが難しくなります。
賃貸契約の審査に通らない場合がある
債務整理をしても、賃貸契約をすること自体は可能です。その際、保証会社を利用するか、保証人を立てる必要があるのが一般的ですが、不動産会社が利用している保証会社が信販系である場合、審査が通りづらくなります。これは、信販系の保証会社は信用情報を照会できるためです。
また、家賃の支払いがクレジットカードの場合、カードが利用できない可能性がありますので、この点も注意が必要です。
ブラックリストに載る期間は5年から10年
債務整理をしたことでブラックリストに載る期間は5年から10年とされています。そして抹消までの期間は、どの債務整理手続きを利用したかによって若干異なるため、以下にて詳しくご説明します。
なお、どの手続きを選択した場合でも、ブラックリストに登録されるタイミングは、返済が数か月滞ったり、弁護士が債務整理手続きに着手したりといったタイミングです。
任意整理
任意整理の場合は、一般的に完済が抹消の起算日となります。つまり、任意整理による返済をすべて終えたタイミングから、およそ5年程度の経過で事故情報が抹消されます。
個人再生
個人再生の場合は、一般的に完済が抹消の起算日となります。つまり、個人再生の再生計画にのっとった返済をすべて終えたタイミングから、およそ5年程度の経過で事故情報が抹消されます。
自己破産
自己破産の場合は、一般的に免責決定が抹消の起算日となります。つまり、自己破産を裁判所に申し立てをし、免責の許可を得たタイミングから、およそ5~10年程度の経過で事故情報が抹消されます。
ブラックリストは本人(代理人)と金融機関しか見られない
ブラックリストというのは、個人情報の1つですので、誰でも好きなように閲覧できるわけではありません。
たとえば、会社の人や家族が情報を目にすることはまずありません。貸金業者や金融機関であっても、閲覧可能なのは審査申込時のみとなっています。事故情報とはいえ、個人情報として厳密に管理されていますのでご安心ください。
ただし、ブラックリストに載ってしまうと、新たな借入ができない、クレジットカードを保有できないなど、数あるリスクが原因で周囲から怪しまれる可能性は十分にあります。特に、家族など身近な人間には怪しまれやすいため、どうしても隠したい方は気を配るようにしてください。
とはいえ、一緒に住んでいるパートナーがいるのであれば、債務整理については正直に話して理解を得たほうが、その後の負担は大きく軽減されるものです。どうしても話しにくいのであれば、専門家に同席してもらうなど、債務整理への理解を深めてもらうサポートをしてもらうのが良いでしょう。
信用情報は「開示請求」で確認できる
自分の現在の信用情報を確認したい場合は、各信用情報機関に「開示請求」をすることで確認できます。開示請求には手数料がかかりますが、いつでも好きなタイミングで確認することができるため、自身の信用情報が気になる方は一度確認してみるのが良いでしょう。
昨今では、新型コロナウイルスの影響もあり、わざわざ窓口へ出向かなくても、家からスマートフォンなどで照会することもできるようになりました。その際の本人確認の方法などは、各信用情報機関によって異なっているため、ホームページや電話相談などで確認してみると良いでしょう。
なお、主な信用情報機関は3つとなっていますが、すべて同時に照会する方法はありません。その都度、開示請求をし、手数料を支払う必要があるので注意してください。
まとめ
ブラックリストというのは、個人信用情報機関に登録される事故情報のことです。債務整理をすると事故情報が登録されてしまいます。そして、この事故情報は抹消までに5年ほど期間が必要で、その間は新たな借入ができないなどの制限がついてきます。しかし、抹消さえされてしまえば、新たな借入をすることも、クレジットカードを保有することも、ローン審査に通ることも可能となります。つまり、債務整理への着手が早ければ早いほど、抹消までの期間も早くなり、その後の生活を今までどおりに過ごせるというわけです。着手が遅い場合は、借金問題をずっと抱えることになるばかりか、その後、仮に債務整理することになっても、抹消されるまでにはそこからさらに5年の経過が必要となってしまうのです。
債務整理というのは、1日も早い着手がその後の人生を豊かなものにしてくれます。もし、ブラックリストによる影響が不安であったり、すでに債務整理を検討しているという方は、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。
司法書士試験合格後、平成16年に簡裁代理権を取得し、不動産や会社の登記業務を数多く手がけてきた。また年間1000人以上の過払い金や借金問題に対峙してきた。「法律用語はなるべく使わず、詳しく、わかりやすく、ゆっくりと、ご説明する」をモットーにじっくりを耳を傾け、ご相談にいらした方々が笑顔でお帰りになる事が私たちの仕事だと考えています。