「アルバイトでも債務整理はできるのだろうか…」
こんな疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか?
債務整理は、借金の返済負担を軽減できる手続きです。
しかし、そもそもアルバイトの場合、債務整理に応じてもらうことはできるのでしょうか?収入が安定しないので、自己破産をするしかないのでしょうか?
実は、債務整理をするのに職業など条件はなく、アルバイトやパートの方でも債務整理はできます。
ただ、手続きによってはアルバイトの方には向かないものもありますので、どの手続きがどんな特徴があるのか、債務整理を成功させるためにはどんなことをすると良いのかなどを知っておくと良いでしょう。
そこで、この記事ではアルバイトの方が債務整理を検討する場合、まず何をするといいのか、そして債務整理を成功させるにはどんなことをしておくと良いのかをご紹介します。
アルバイトでも債務整理の手続きはできる!
結論から言えば、アルバイトでも債務整理の手続きはできます。
債務整理というのは、債務超過の状態にあり、返済に困窮している方を救済する手続きであるため、アルバイトで収入がそれほどない方であっても利用することが可能です。
極端な話をすれば、アルバイトをしていない無職の方であっても、債務整理手続きを利用することは可能です。
ただし、債務整理には種類があり、収入状況によっては利用できない手続きがあるのは事実です。たとえば、債務整理の中でもっとも利用する方が多い「任意整理」は、返済が前提になる手続きであるため、借入残高に応じて毎月「一定以上の収入」がなければ利用することができません。
また、「個人再生」は、収入があるだけでなく「安定した収入」がなければ利用できないことになっています。アルバイトの方でも債務整理はできますが、どの債務整理手続きがご自身に適しているかは、個々の状況によって異なります。
アルバイトの方もまずは「任意整理」から検討する
債務整理を利用したい場合、アルバイトの方もまずは「任意整理」から検討します。
任意整理は、現在支払っている借金の将来利息や手数料をカットし、毎月の返済額を無理のない金額に変更、最終的に3~5年程度で完済を目指す手続きです。
借金には利息がつきますので、返済期間が伸びれば伸びるほど返済する総額が増えていきます。たとえば、毎月5万円返済しているとして、3万円が利息の支払いに充てられていれば、借入元金は2万円しか減りません。
しかし、利息をカットしてもらうことができれば、毎月の返済がすべて借入元金に充当できるため、完済までの期間を一気に短縮することができます。この返済負担の軽減が任意整理の特徴です。
「任意整理」はアルバイトでも手続き可能な場合が多い
任意整理は、他の債務整理手続きと比較すると、非常に柔軟で自由度が高い手続きになっています。そのため、パートやアルバイトの方でも、まずは任意整理から検討するのが一般的です。
また、任意整理は多くのケースで返済開始までの期間に積み立てを行います。
債務整理というのは、どの手続きを選択した場合でも、司法書士や弁護士が着手した時点で一旦すべての返済がストップしますので、今まで返済に充てていた金額の中から生活に無理が生じない金額を、毎月、司法書士や弁護士の預り金口座に積み立てていき、返済開始時の負担を軽減させたり、司法書士や弁護士に支払う費用に充てたりします。
特に、アルバイトやパートをされていて収入が安定していない方は、事前に積み立てを行うケースが多いでしょう。
ただし、任意整理を利用するためには、借入元金を3~5年程度で返済できる程度は毎月の収入が必要とされます。
たとえば、借金が100万円ある方であれば、3年間(36回払い)の場合、毎月27,000円程度は返済できるだけの収入が求められます。
任意整理で返済が難しい場合は「自己破産」の検討を
任意整理による返済が難しい場合、次は「自己破産」を検討することが一般的です。自己破産は、保有財産を処分しなければならないなどの制限がありますが、任意整理や個人再生とは異なり、手続き後に返済していく必要がありません。
現在抱えている借金がすべて免除されるため、収入が安定していないアルバイトやパートの方はもちろんのこと、まったく収入がない専業主婦(主夫)の方や無職の方でも手続きすることが可能です。
保有財産がほとんどない方であれば、処分される財産もほとんどありませんので、無理に任意整理による返済をするより、自己破産をして手続き終了後から借金に悩まされない生活を手に入れたほうが良いケースはたくさんあります。
任意整理、自己破産のどちらを選択すべきかについては、総借入額や収入状況、手続きを利用する方の保有財産によっても異なるため、司法書士や弁護士といった専門家に判断してもらいましょう。
特別な事情がある場合は「個人再生」の検討をする
特別な事情がある場合は、「個人再生」を検討することになります。
個人再生は少し特殊な手続きで、住宅ローンがある方に対して、住宅ローンは従前どおり返済を続け、それ以外の借金の返済負担を大幅に軽減することができる制度があるため、マイホームを維持したい方が特に利用することが多い手続きです。
また、自己破産には免責不許可事由といって、借金の経緯などによって免除が認められない場合があります。しかし、個人再生であれば、自己破産の免責不許可事由に該当していても利用可能なケースが多々あります。
このように、特別な事情がある方は個人再生の利用を検討します。ただし、個人再生は、「安定した収入がある」ことが利用条件の1つであるため、アルバイトやパートの収入が安定していると判断されるだけの理由がなければなりません。
たとえば、毎月の収入に波がなく、年単位の収入も大きな変動がないといった事実を、裁判所に示さなければなりません。
そのため、どうしても収入に変動のあるアルバイトやパートの方が個人再生を利用するケースというのは稀でしょう。
上述したような、よほど特別な事情がある場合に限ると言えます。
債務整理を成功させるためにできること4つ
では次に、アルバイトやパートの方が債務整理を成功させるためにできることを4つご紹介します。
特に、手続き後も返済が続く任意整理や個人再生を行うには、以下の4つのことをうまく用いて、安定した収入を確保することが何よりも大切です。
①アルバイト先はコロコロと変えない
②収入額の変動幅は20%以内に
③収入が多いときに貯金する癖をつける
④家族の協力を得る
アルバイト先はコロコロと変えない
転々とアルバイト先を変えていると、どうしても収入のない期間が出てしまったり、長続きしない傾向にあると判断されてしまう可能性があります。
任意整理であれば、債権者に「またすぐに収入が途絶えてしまうのでは?」という印象を与えてしまい、交渉が難航することも考えられますし、個人再生の場合も、安定した収入があると認められなくなってしまうおそれがあります。
もし転職を考えているなら、短期の仕事ではなく、できるだけ長く勤務できる勤務先を探すようにしましょう。
収入額の変動幅は20%以内に
個人再生は、個々の事情に応じて「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」を選択することができます。
そして、給与所得者等再生を利用する場合、安定した収入があると判断されるには「月々の収入の変動幅が20%以内である」ことがひとつの目安となります。多少の増減は問題ありませんが、月によって大きく変動がある職業の場合と安定した収入とは認めてもらえない可能性があります。
通常は、まず小規模個人再生の利用を検討することが一般的ですので、そこまで厳しく収入の変動幅について言われることはないかもしれませんが、小規模個人再生は債権者から意見を求める機会があり、そこで過半数、もしくは総債務額の半分以上の債権者から反対意見が出てしまった場合に利用ができなくなってしまいます。
しかし、安定した収入があることで不利になることはありませんから、できる限り収入の波を抑えられるようにしておけるとより安心です。
収入が多いときに貯金する癖をつける
アルバイトはシフト制で、ひと月の勤務時間が一定ではないことが多いため、勤務時間や日数が減れば、そのまま収入がダウンしてしまいます。
もし、体調不良や勤務先の都合などによって、勤務時間や日数が減ってしまえば、それだけ収入が少なくなってしまいます。こうした事態に備えて、日頃から収入が多いときに貯金する癖をつけると良いでしょう。
月の支出は一定額以内に収まるようにして、余った月は貯めておく癖をつけることが、債務整理の返済期間を乗り切るコツの1つです。
また、これはそのまま借金に頼らない金銭感覚を身に着けることにもつながります。債務整理を通して、借金に依存しない生活を手に入れましょう。
家族の協力を得る
債務整理を利用する場合、家族の協力を得ることが大切です。債務整理することを事前に家族に説明しておき、急に何らかのやむを得ない事情で収入が減った場合に援助してもらえるようにしておくと安心です。
しかし、中には家族には内緒にしておきたいといった事情を抱えている方もいらっしゃるはずです。急にやむを得ない事情があった際には、すぐに手続きをした司法書士や弁護士へ再度相談しましょう。
任意整理や個人再生は3~5年程度で完済を目指す手続きですが、期間が長いことからも収入状況が変わってしまうことがあっても決しておかしなことではありません。
現在の状況に適した債務整理手続きが必ずあるため、一度債務整理を利用し、返済中であったとしても、事情が変わって返済が苦しいと感じているのであれば、本当に返済ができなくなってしまう前にまず相談をしてください。
まとめ
アルバイトやパートの方でも債務整理をすることはできます。
アルバイトやパートの方が債務整理をする場合も、まずは「任意整理」から検討し、難しければ「自己破産」、特別な事情がある場合には「個人再生」と検討をしていきます。
どの方法が適しているかは、個人の収入状況や保有資産等によって異なります。どの手続きがご自身にとって適正であるかを見極めるためにも、まずは司法書士や弁護士といった専門家への相談からはじめるのが良いでしょう。
最近は、無料法律相談を実施している専門家が増えてきていますので、まずは無料法律相談を利用して、自身の状況に応じたアドバイスをもらってみることをおすすめします。
法律のプロからアドバイスをもらった上で、ご自身の今後の行動を検討してみることで、借金問題からの脱却が実現することでしょう。
司法書士試験合格後、平成16年に簡裁代理権を取得し、不動産や会社の登記業務を数多く手がけてきた。また年間1000人以上の過払い金や借金問題に対峙してきた。「法律用語はなるべく使わず、詳しく、わかりやすく、ゆっくりと、ご説明する」をモットーにじっくりを耳を傾け、ご相談にいらした方々が笑顔でお帰りになる事が私たちの仕事だと考えています。