債務整理がスタートすると、すべての返済がストップし、手続き中は貸金業者からの催促も一切こなくなります。
これは、手続き中に借金の残高が変わってしまわないようにするためでこの期間に生活の立て直しをしたり、返済が再開したときに向けた積み立てを行ったりします。
つまり、この期間中は手続きをしているカード会社などから新たな借り入れも当然できません。
そして、手続きをしてない会社からの借り入れも、基本的にはできないと考えたほうが良いでしょう。
では、この準備期間にどうしてもお金が必要になってしまった場合はどうすれば良いのでしょう?債務整理中でも借入はできるのでしょうか?
今回は、債務整理中にどうしてもお金が必要なときの対処方法について解説していきます。
債務整理中は基本的に借り入れができない!
債務整理中というのは、基本的に借り入れをすることはできません。
司法書士や弁護士に依頼して債務整理をすることで、個人信用情報機関に事故情報として登録されるためです。いわゆるブラックリストと呼ばれるものです。
そのため、新たな借り入れをしようとしても、与信審査に通らなくなります。
この事故情報の抹消は、債務整理の種類によって期間が若干異なりますが、任意整理の場合は完済から5年程度は抹消されないことになっています。任意整理の一般的な返済期間が3~5年程度であるため、そこからさらに5年となると、10年近くは新たな借り入れはできないものと考えておきましょう。
どうしてもお金が必要な場合の5つの対処方法
債務整理中は新たな借り入れはできませんが、それでもどうしてもお金が必要な場面が出てくることもあります。
そのようなときは、新たな借金を作ってしまう前に誰かに相談しましょう。
具体的には、次のような方法があります。
①家族に相談する
②公的支援制度を行っている窓口に相談する
③債務整理をしてくれている専門家に相談する
④生活保護の需給を申請する
⑤資産の一部を売却する
一つずつ具体的に見ていきましょう。
①債務整理をしてくれている専門家に相談する
まずは、債務整理を依頼している専門家に相談をしましょう。
特に、債務整理問題を多く処理してきた事務所であれば、どのような対処法があるのか、また、その地域ならではの対処法についてアドバイスを受けることができるかもしれません。
また、専門家への費用を積み立て中の場合、その支払いを遅らせてくれるといった柔軟な対応を取ってくれるところもあります。債務整理中にお金がないことを専門家は重々承知していますので、お金が必要だと話して怒られることはありません。
むしろ、専門家へ内緒で新たな借り入れをしてしまった場合、今進めている手続きができなくなってしまう危険性がありますので、自己判断で行動してはいけません。この後ご紹介する方法を検討する場合も、まずはその旨を専門家へ相談してから行うことをおすすめします。
②家族に相談する
どうしてもお金が必要な場合は、家族に支援してもらうという方法もあります。
しかし注意しなければならないのが、借り入れをすることがあってはなりません。特に、債務整理の方針が自己破産や個人再生だった場合、家族も債権者として手続きに参加してもらうことになってしまいます。
それを隠した場合、手続きそのものが失敗してしまう危険もあるため、たとえ家族であっても債務整理中に借り入れはすべきではありません。
お金の工面ではなく生活のサポートなどをしてもらうようにしましょう。
③公的支援制度等を行っている窓口に相談する
各自治体や社会福祉協議会などでは、公的支援制度を行っており、債務整理中でも利用できるケースがあります。
社会福祉協議会の生活福祉資金
この制度は、一時的に経済的な困難に直面している人々を支援するために、地方自治体が提供する生活費や福祉サービスのための資金を貸し付けるものです。申請者は、生活費や医療費、住宅費などの必要な経費を賄うために、一定の条件を満たす必要があります。
生活困窮者や高齢者、障害者、子育て中の家庭など、経済的な支援が必要な人を対象に、総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の4種類の貸し付けを行っています。
全国社会福祉協議会/福祉の資金(貸付制度):https://www.shakyo.or.jp/guide/shikin/seikatsu/index.htm
ハローワークの求職者支援制度
求職者支援資制度は、退職して雇用保険を受給できない人や、収入が一定金額以下の人が、再就職や今の仕事で収入アップを目指して給付金を受給しながら無料の職業訓練を受講できる制度です。
ハローワークへ求職の申込みをしていることや、職業訓練に8割以上出席していることなどが条件となっています。
厚生労働省/求職者支援制度:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyushokusha_shien/index.html
各自治体の母子父子寡婦福祉資金貸付制度
20歳未満の子どもをもつひとり親家庭を対象に行われている貸付です。
申請は各自治体で受け付けており、子どもを就学させるために必要な資金を貸し付ける「就学資金」や、ひとり親になって間もない人などを対象とした「生活資金」、転居のために必要な資金の貸し付けを行う「転宅資金」など、用途に応じた資金の種類があります。
内閣府男女共同参画局/母子父子寡婦福祉金貸付制度:https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/law/23.html
善意銀行の貸付事業
善意銀行の貸付事業は、社会福祉協議会や民間団体が行っている取り組みです。
低所得者や起業家、地域の活性化など、経済的に弱い立場にある個人や団体に対して、融資を行うことで支援します。
善意銀行は、利益追求よりも社会的な影響を重視し、返済能力や担保の有無に関係なく、貸付を行います。貸付金額や返済条件は、各善意銀行の方針によって異なります。
④生活保護の受給を申請する
債務整理中にまた借り入れをしなければならないほどお金が足りない場合、おそらく現在の収支では生活が厳しい状態にあると言えるでしょう。
その場合は生活保護の申請をすることも検討してみましょう。
ただし、生活保護で受給されたお金は借金の返済に充てることはできません。借金の返済に充てていることが発覚すると、需給が止められてしまう可能性もありますので、注意してください。
⑤資産の一部を売却する
資産がある人は、その一部を売るという方法も検討しましょう。
自己破産や個人再生の場合、高額な資産を自分の判断で勝手に売却することはできませんが、20万円以下の資産であれば報告する必要はありません。
片付けがてら家に眠っている不用品がないか確認してみましょう。最近では、家にある不用品を簡単に売れるアプリなどがありますので、積極的に活用してみるのも良いでしょう。
債務整理中に借り入れすると起こる3つのリスク
債務整理中は基本的に借り入れができないと紹介してきましたが、絶対ではありません。もし、債務整理中に借り入れをしたらどうなるのでしょうか。具体的には、以下の3つのリスクが起こる危険があります。
①知らずに未登録業者(=闇金)から借り入れをする恐れがある
②債務整理の手続きが失敗する恐れがある
③専門家から辞任されてしまう恐れがある
どれもあなたの借金問題を悪化させてしまう恐ろしいリスクですので、ひとつずつ詳しくご紹介します。
①知らずに未登録業者(=闇金業者)から借り入れをする恐れがある
お金を貸す業者は、財務局長か都道府県知事に登録をしなければいけません。この登録をせずに貸金業を営業している業者を無登録業者、いわゆる闇金業者と言います。
闇金業者は利率が高額であったり、取り立ての方法が過激であったりと違法な営業をしているところが多く、そのため契約書や借用書がなく口約束だけでお金を貸してくれるというところもあるそうです。
闇金業者の多くは、「ブラックでもOK」や「審査が通りやすい」、「無審査」のように、融資の条件がゆるいことをうたい文句としているところが多いのが特徴です。
債務整理中でもお金が借り入れられるところを探していると、いつの間にか闇金業者に問い合わせていた、というケースは多いですので、くれぐれも注意しましょう。
②債務整理の手続きが失敗する恐れがある
債務整理中に借り入れをすると手続きが失敗する恐れがあります。
手続きの種類別に詳しく解説します。
任意整理では債権者が減額交渉に応じてくれなくなる
任意整理では、債権者が減額交渉に応じてくれなくなる恐れがあります。
借り入れをしたことが債権者にまで伝わる可能性自体はあまり高くありませんが、何かの経緯で債権者が知ってしまったら、「何のために債務整理をしているんだ」と思われてしまい交渉が難航することになります。
「新たに借り入れた会社に返済する余裕があるなら、うちは減額しなくてもいいですね」と言われてしまい、和解交渉が決裂してしまったら、裁判へ発展してしまったり、自己破産等を検討しなければならなくなったりするかもしれません。
個人再生が認められなくなる
個人再生では、裁判所から手続きの認可が下りなくなる恐れがあります。個人再生には「再生計画」といって、将来的な返済計画を作成し、提出しなければなりません。
しかし、手続きの途中で新たな借り入れを作ってしまうと、とても再生計画にのっとった返済などできないと判断され、手続きの認可が降りなくなってしまいます。
自己破産の免責許可が下りなくなる
自己破産では、裁判所から免責許可が下りなくなる恐れがあります。
自己破産手続き中の借り入れは、破産することを前提にした借り入れ、つまり「破産するから返すつもりは最初からないのに借りた」とみなされ、詐欺的な借り入れと判断される可能性があります。
そうなると、もちろん免責許可は降りません。
③専門家から辞任されてしまう恐れがある
債務整理中にどうしてもお金に困っているのであれば、まずは必ず専門家に相談してください。
もし、専門家に相談しないで勝手にお金を借りてしまえば、専門家の信頼も失うことになりかねません。そうなると、専門家は手続きを辞任せざるを得なくなってしまいます。
専門家に辞任されてしまったら、今までストップしていた督促が再開するどころか、一括請求をされてしまうこともあります。
あなたの借金問題がさらに深刻な状況になってしまいますので、絶対に、内緒で新たにお金を借りることはしないでください。
まとめ
債務整理中は、基本的に新たな借り入れをすることはできません。
債務整理中でもお金が借りられる業者は、闇金業者である可能性が高く、さらに高額な金利がのしかかってしまいますので、「ブラックOK」や「審査に通りやすい」といったうたい文句に惑わされないようにしましょう。
もし、債務整理中にどうしても借り入れをしなければいけないほどお金が必要な場合はまず、手続きを依頼している専門家へ相談してください。そして専門家の判断のもと、家族に相談をしたり、公的機関へ相談をしたりしましょう。
専門家に内緒で新たな借り入れをしてしまうと、手続きが失敗して今より状況がさらに悪化してしまいかねません。
手続き中にお金が必要になっても、絶対に自己判断で新たな借り入れをしてはいけません。
司法書士試験合格後、平成16年に簡裁代理権を取得し、不動産や会社の登記業務を数多く手がけてきた。また年間1000人以上の過払い金や借金問題に対峙してきた。「法律用語はなるべく使わず、詳しく、わかりやすく、ゆっくりと、ご説明する」をモットーにじっくりを耳を傾け、ご相談にいらした方々が笑顔でお帰りになる事が私たちの仕事だと考えています。